エコプラザオープン記念スペシャルトークライブ「なぜ私たちは森をつくるのか(2/2)」

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エコプラザオープン記念スペシャルトークライブ
「なぜ私たちは森をつくるのか(2/2)」

パネリスト : ワンガリ・マータイさん/宮脇昭さん/安藤忠雄さん

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◇足元からまず行動

斗ケ沢部長) 森はいかなる価値を持つのかをうかがいたい。マータイさんは「グリーンベルト運動」=ことば=で4000万本ほどの木を植えたということだが。

マータイさん) 日本では、空き地に木がないということは、考えられないと思う。国内のどこにでもあり、国土面積の7割ほどが、森に覆われていると聞いている。これに対して、ケニアは、たった2%に過ぎない。
 ケニアでは8割の人が自分の土地で食料を得ており、まず地面を木で覆い、土壌を浸食させないことが大切だ。煮炊きや暖を取るために、たきぎを使い、家は木と泥でできているなど、木は重要な役割を果たしている。
 木は乾期では飼料にもなり、植樹によって野生動物も集まってくるので、「グリーンベルト運動」では、農家の人もかかわっている。自分が植えた木が土地を実り豊かなものにし、家を建てることもできるのは素晴らしいことだ。森はさまざまな恵みを与えてくれるのだ。しかし、私たちはその恵みを、当然のものと思ってしまっているところがある。日本人が森を愛しているのは素晴らしいこと。感謝の念を持ち続けたい。

斗ケ沢部長) 宮脇さんには、さまざまな企業が協力している。店舗面積を削って植樹するところもある。そうしてまで緑を増やそうと、経済人は考え始めているのか。

宮脇さん) 植樹活動が社会貢献であると思っているのと同時に、先見性を持ってビジネスで優位に立てるのかということも考えている。植樹活動の企業へのメリットを、1年単位で考えるのか、それとも5年、10年といった単位で考えるのか。企業のトップの人たちが理解し始めていると思う。
 あなたの会社や家族のために、少し我慢して木を植えることが重要だ。木を植えることは哲学であり、命そのものである。
 ケニアで最初に植樹をした時、今までにこにこしていたマータイさんが真顔になって、「(野生動物を観察する観光である)サファリのついでに、植林して自己満足で終わるならお断りしたい。森をつくるまで長く続けてほしい」と話した。私は「分かりました。10年はやりましょう」と応じて始めた。
 20年、30年と続けたいと思っている。来年春にもケニアで植樹しますので、この会場のみなさん全員で行きましょう。

斗ケ沢部長) 安藤さんが植樹に積極的にかかわり始めたのは、阪神大震災が契機になっていると推察されるが。

安藤さん) 神戸市の御影というところで仕事をした時のこと。樹齢200年ぐらいのクスノキが3本あり、「神が宿っている木だから、切ってはいけない」と地主に言われたことが強く印象に残っている。木が持つ影響力を思い知らされた。阪神・淡路大震災の後に、多くの建物を手がけた。その時に感じたのは、大きな木が火災を食い止めていたということだ。
 また、季節が巡ってくると、被災地に咲いた花が美しく、被災者を癒やしてくれた。「花は人の心を豊かにするものだ」と思い、12万戸あまり建てた復興住宅に、寄付を募ってモクレンなど約30万本の木を植えた。
 モノを作るだけでなく、育てていかなければならないと感じた。
 もう十数年たったが、地元の知り合いから「モクレン、咲いてるよ」と言われると、ああ役に立ったのかなあとも思う。人々の心の中に残るものなのだろうと思った。東京にだってまだ余地はある。一人一人ができることは小さいが、みんなでやれば大きな力になる。

斗ケ沢部長) 続いて、森が持つ精神的な価値について、うかがいたい。安藤さんはご自身の建築の中にかなり木を取り入れた作品があると思うが、建築における木の役割とは。

安藤さん) 私は建築の教育を全く受けていない。自分なりの方法があるだろうと思い、大阪に近い京都や奈良にある文化財である東大寺や法隆寺などを見て勉強した。これだけ大きい木造建築が、これだけの長い間持つのだなと感動したものだ。
 92年にスペイン・セビリアで開かれた万国博覧会の日本館を設計した時、大きな木造の建築物にした。手がけている香川県の直島にある文化村でも、300年ほど前の民家を展示スペースにしている。やはり日本人の遺伝子の中に、しっかりと木の文化が組み込まれているのではないかと思っている。

宮脇さん) 海外のシンポジウムで外国の学者から「日本は4000年来の鎮守の森をわずか100年で失おうとしているのではないか」と言われた。日本人の精神的な柱である鎮守の森は減ってきている。関東大震災では、公園などでは多くの人が亡くなったが、土地本来のシイやカシが茂る鎮守の森では、死者がほとんどいなかったという。エコロジカルな森づくりは、21世紀の公共事業だと思う。都市の中に森をつくることは、命を守ることだ。木を植えることは、明日を植えることでもある。

マータイさん) 木は以前から人々の精神的な支えとして、存在していたと思う。母が私に薪を取ってくるように言った時、同時に「イチジクの木は、神様の木なので取ってはいけない」とも話していた。イチジクの木はすぐそばにあった。一方で、家は高地の斜面にあったので、木は貴重で守らなければならず、神聖化していたのだと思う。そのため、母もそのような表現をしたのだろう。
 また、ケニアの最高峰であるケニア山は、森に囲まれ、300以上の川が流れている。人々には、「神が宿っている」と言われていた。
 これは非常に示唆に富んだことで、そう言っていた人々は、森が持つ役割など科学的な知識はなかったが、木や自然に対する畏敬(いけい)の念を持っていた。自分たちが森によって生かされていることを実感していたからだ。
 元々、人間は、自然に感謝して暮らしてきた。しかし、いつしか自然への畏敬の念を忘れ、木々を伐採し、環境を破壊していった。地球は温暖化で人間に反撃しているように思えるのだ。私たちは、自然の恵みや知恵を再発見する必要がある。

斗ケ沢部長) 森づくりの国際協力を、どのように進めていくべきか。今後、どのような活動をしていくのか。

宮脇さん) 今、一番大切なのは、熱帯林と都市の森をどうするかだ。議論だけをする時は終わった。東南アジアやブラジル、そしてケニアなどで、まず木を植えることだ。皆さんの足元から何本かずつでも植えていってほしい。ともに頑張りましょう。よろしくお願いします。

安藤さん) 兵庫県では小学校の近くに木を植える運動をしている。子供たちが木を育て、時間がたつと、森の中に学校があるということになる。卒業しても、そこに木がある。それが人と森につながることになるのだ。

マータイさん) 私たちは、すでに木を植える国際協力に参加しているのだと思う。
 「MOTTAINAI」運動の一環として商品化されたものの一部が、「グリーンベルト運動」の資金となり、私たちが、ケニアに木を植えている。これらの運動に参加してもらうことで、大勢の人たちが、木を植える運動につながっているのだ。


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□■ことば■□
※グリーンベルト運動
マータイさんが米国留学から帰国後の77年から始めた植樹活動。04年にアフリカ人女性として初のノーベル平和賞を受賞した理由の柱の一つとなった。大規模ダムなど開発のために進む祖国の自然破壊と、その開発の恩恵を受けない庶民の姿が活動のきっかけとなった。農村での森林の回復を目的に、ケニアで7本の苗木を植えて始まったこの活動は、現在はアフリカ各地に広がり、植樹した数は4000万本にもなる。また、活動を通じて、女性の地位向上に寄与したほか、地域の連帯感も醸成することとなり、民族対立の激しい地域の融和にも大きく貢献している。
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(毎日新聞 2008年6月5日 東京朝刊より 文:佐藤岳幸(文) 写真:橋本政明)

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