エコプラザオープン記念スペシャルトークライブ「なぜ私たちは森をつくるのか(1/2)」

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エコプラザオープン記念スペシャルトークライブ
「なぜ私たちは森をつくるのか(1/2)」

パネリスト : ワンガリ・マータイさん/宮脇昭さん/安藤忠雄さん

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◇木を植える、命を育てる

 地球温暖化防止のため、地域の活動や情報発信の拠点となる環境学習施設「港区立エコプラザ」(東京都港区)のオープンを記念したトークライブ「なぜ私たちは森をつくるのか」(主催・毎日アースデイ、協力・毎日新聞社)が5月31日、木の香ただよう新築の同プラザで開かれた。パネリストは、いずれも森づくりに深くかかわり、世界的に活躍している豪華な3人の顔ぶれとなった。ノーベル平和賞受賞のワンガリ・マータイさん(68)、横浜国立大学名誉教授の宮脇昭さん(80)、建築家の安藤忠雄さん(66)。森が持つ物質的、精神的な役割など、経験に基づいた示唆に富む内容となった。(コーディネーターは、斗ケ沢秀俊・東京本社科学環境部長)

◇本物を世界に広げる---宮脇さん
◇温暖化は地球の反撃---マータイさん
◇みんなでやれば力に---安藤さん

武井雅昭・港区長) エコプラザのこけら落としにふさわしい素晴らしいゲストをお迎えすることができた。04年に環境保護活動などでアフリカ人女性で初めてノーベル平和賞を受賞されたワンガリ・マータイさん、世界的な建築家として有名な安藤忠雄さん、植樹活動を続ける生態学者として知られる宮脇昭さん。3人の華々しい経歴についてはご存じと思うが、共通しているのは、木を植える人だということだ。今日は「なぜ私たちは森をつくるのか」と題して、エコプラザのテーマである木を植えること、森づくりを巡って貴重なお話を伺いたいと思う。

斗ケ沢秀俊・科学環境部長) マータイさんは、「グリーンベルト運動」を長くケニアでされて、ノーベル平和賞を受賞された。宮脇さんは、その土地にあった木を植えるという考えで各地で植樹を続けてこられた。安藤さんは、瀬戸内や東京都内での植林活動に積極的にかかわっていらっしゃる。森をつくることに関して、深くかかわっていらっしゃる方々に、なぜ私たちが森をつくる必要があるのかについて、このパネルディスカッションを通じて、明らかにしていきたい。まずご自身の活動について、報告していただきたい。

マータイさん) みなさんにお目にかかれてうれしい。私たちはみな木を愛している。木とともに生きてきた。アフリカで薪を集めていた時のことを思い返している。小さい時から私は木に親しんでいた。木があって、雨が降り、川が流れる。私たちは当たり前と思ってしまうが、森がなければならない。
 「グリーンベルト運動」を始めたころ、同じ地域に住んでいた女性と、木や森の必要性を話し合っていた。私たちは素晴らしい森の中に育ったが、失われてきている。それで木を植えようという話をした。土壌を守り、雨水をためるために必要と考えた。これまで30年取り組んできたが、森はそれ以上の役割を果たすことに気付かされた。生物多様性を保つことや二酸化炭素を固定し、大気を正常な状態に維持してくれるなど、私たちの命に大切な役割を果たしてくれることに思い至った。
 木なくしてはこの地球に存在しない。なぜ、木を植えるのかということにはたくさんの答えがあるが、強調したいのは、木は私たちが生きていくために不可欠だということだ。私は森で3R(リデュース、リユース、リサイクル)の概念を見つけた。また、感謝の気持ちである「MOTTAINAI」の精神を、木や森に対して思うようになった。

宮脇さん) マータイさんが言う通り、木を植えることは単なる小手先のものでなく、命を植えることなのだということだ。私は岡山の農家の四男坊として生まれ、雑草に苦労した経験から学者になった。恩師となるドイツのラインホルト・チュクセン教授(植物社会学)に認められ、1958年から留学した。
 2年あまりの留学から帰国して調べると、その土地の木があまりにも少ないので、本来の森を回復しようと思った。当時は相手にされなかったが、今は先見性を持った企業や自治体が協力してくれている。
 また地球の生態系の基本ともいえる熱帯林での植林もボルネオなどで始めていたが、アフリカには、つてがなかった。その時、毎日新聞がマータイさんを招いてくれた。初めて会い、どのような人かと思ったが、30年来の友人のように分かり合え、4回、植林することができた。真っ赤な土の中で植林をして、命を守る大切さを実感した。
 土地本来の木を混植・密植した健全な状態で植えることが大切だ。マータイさんが言われたように本来の森を取り戻すことが大切。本物の森づくりを日本からアジア、アフリカに、そして世界に広げていきたい。本物は長く続くものだ。私があと30年続けるとなると、安藤先生は、もっと長く生きていなければならないが(笑い)。

安藤さん) 建築家であり、ハコ作りをしている。マータイさんも宮脇先生も、本気で森づくりに取り組んでいらっしゃる。「同席するのはまずいのでは」と最初は断ったが、どうしてもと言われ出席した。宮脇先生はアマゾンにまで出かけて、植林している。それはただ木を植えているということだけでなく、地球は一つなんだという強い思いから、日本やアジア、アフリカにまで活動している。「地球号」として存続させることを考えていらっしゃる。
 地球の生態系を破壊しているのは人間だ。100年前の十数億人であった人口が、今は67億人で、2050年には90億人になろうとしている。よほど地球のことを考えていかないと、人類は生かしてもらえないというぎりぎりの状況になっているのに、依然としてのんきに生きている。宮脇先生やマータイさんは「もっと考えろ」と警鐘を鳴らしているのだと思う。
 私は東京・青山の「同潤会アパート」の建て替えにかかわった。「表参道ヒルズ」というが、そこには18メートルぐらいのけやき並木がずっとある。「あのけやき並木よりも低い建物にするならやらせてもらう」と言った。おおよそ5階建て(一部6階)の建物にしたが、建物は経済効率を考えると、容積率いっぱいにしなければならない。皆に「もっと上に乗せろ。何を考えている」などと言われた。そこで私は「私たちはもっと、けやき並木に尊敬の念を持たなければならないのではないか」と主張して通した。
 六本木ヒルズにある、三宅一生さんが運営する美術館「2121デザインサイト」(東京都港区)は地上1階地下1階だ。木が育つとすっぽりと隠れるようにしたのだ。お台場の向こうに「海の森公園」=ことば=というのがある。埋め立て地に木を植えようと、都知事の石原慎太郎さんに「10年後には立派な森になりますよ」と言ったら、彼は「おもしろい」と言っていた。私が手がけた新しい渋谷の地下駅は電車の風と外気から来る風を利用し、二酸化炭素をなるべく排出しないようにしている。そういう小さなことを積み重ね、ハコづくりから森づくりにも貢献したいと思っている。

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□■ことば■□
※海の森公園
東京都が東京湾に建設中の海上公園。23区から排出された1230万トンのごみが埋め立てられた中央防波堤内側埋立地約88ヘクタールを森に変え、海から都心に吹き抜ける「風の道」の基点としようという事業。07年7月から植樹が始まり、今年度は9000本を植える予定。募金も呼びかけている。
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(毎日新聞 2008年6月5日 東京朝刊より 文:佐藤岳幸(文) 写真:橋本政明)

Vol.2へつづく